白内障ナビ
新眼内レンズ公開: 2026-08-12

白内障手術の最新動向——光調整レンズ・調節性IOL・AI活用までを総説が整理

白内障手術はこの数十年で大きく進歩してきましたが、 いま何がどこまで進んでいるのかは分かりにくいところです。 医学誌 Current Opinion in Ophthalmology に、 近年の技術・手技・材料の進歩を整理し、 見え方・安全性・世界的な普及という観点から評価した総説が掲載されました。 患者側から見て何が選択肢として増えているのかを把握しやすい内容です。

発表の要点

  1. 1

    標準手技は今も超音波乳化吸引術

    総説は、超音波で水晶体を砕いて吸い出す「超音波乳化吸引術(フェイコ)」が今も標準であることを確認しています。そのうえで、眼内に流す液の制御(フルイディクス)や超音波の出し方の調整、3Dヘッドアップ視認(モニターを見ながら手術する方式)といった細かな改良が、手術の効率と執刀医の姿勢の負担軽減につながっているとしています。
  2. 2

    フェムト秒レーザーは「硬い水晶体」で利点

    フェムト秒レーザー支援手術については、水晶体が硬い症例や支持が不安定な症例で測定可能な利点があるとしつつ、通常の症例では現代の超音波乳化吸引術と長期的な見え方は同程度だと整理しています。全例に有利というわけではなく、症例を選んで使う技術という位置づけです。
  3. 3

    レンズの選択肢が多様化——術後に度数を調整できるタイプも

    老視(近くが見えにくくなる変化)に対応するレンズが多様化しており、三焦点レンズと焦点深度拡張型(EDOF)レンズは眼鏡を使わずに過ごせる割合が高いと報告されています。さらに、手術後に光を当てて度数を微調整できる「光調整レンズ」、液体を使う方式や2枚のレンズを組み合わせる方式の初期段階の調節性レンズでは2〜2.5D程度の実際の調節力が示されているとしています。
  4. 4

    術中の支援技術とAI

    手術中にモニター上へ情報を重ねるデジタルオーバーレイ、術中に度数を測る波面収差解析(アバロメトリー)、顕微鏡に組み込んだ光干渉断層計(OCT)、AIによる手術映像の解析などが、屈折の精度向上と若手医師の教育に役立つと整理されています。加えて、薬剤を放出するレンズやナノ加工を施したレンズ、低コストの携帯型機器、環境負荷を下げる取り組みにも触れています。

背景・コンテキスト

白内障手術は、濁った水晶体を取り除いて人工の眼内レンズに置き換える手術です。 以前は「濁りを取って視力を回復させる手術」でしたが、 現在は近視・遠視・乱視といった屈折の矯正や、 併存する眼の病気への対応も同時に考える手術へと位置づけが変わってきています。 総説はこの流れを「包括的で個別化された眼のリハビリテーション」と表現しています。

ただし、ここで紹介されている技術のすべてが日本で使えるわけではありません。 国内で使用できるレンズや機器は薬事承認を受けたものに限られ、 保険診療で使えるか、選定療養や自由診療になるかも製品によって異なります。 総説は世界の動向を俯瞰したものとして読む必要があります。

患者にとっての意味

技術の選択肢が増えたことは、「自分の生活に合う見え方を相談して決める余地が広がった」と受け取るのが実際的です。 新しい技術が常に自分に向いているとは限らず、 眼の状態や併存する病気、普段の生活で何を見る時間が長いかによって適した組み合わせは変わります。 手術を検討する際は、機器やレンズの名前を比べるより、 「日常のどの場面で眼鏡なしで過ごしたいか」を具体的に伝えたうえで、 その医療機関で扱える選択肢を確認するほうが判断しやすくなります。

出典

関連記事