解説公開: 2026-08-17
白内障と緑内障はどう違うのか——濁るレンズと、傷む神経
「白内障」と「緑内障」は名前の作りが似ているため、 同じ病気の種類違いだと受け取られることがあります。 しかしこの2つは、目のどこが傷むのかという点から違う病気です。 白内障は光を通す水晶体が濁る病気で、緑内障は目で受け取った情報を脳へ送る視神経が障害される病気です。 治療で取り戻せるものが異なるため、区別を知っておくことには実用的な意味があります。
発表の要点
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濁るのは水晶体、傷むのは視神経
白内障では、目のレンズにあたる水晶体のたんぱく質が変化して濁り、光が散乱して見え方が悪くなります。緑内障では、視神経が障害されて視野が少しずつ欠けていきます。日本眼科学会は緑内障を、視神経の形と機能(視野)の特徴的な変化から診断される病気と説明しています。 - 2
取り戻せるものが違う
白内障は濁った水晶体を眼内レンズに置き換える手術によって、見え方の改善が期待できます。一方、緑内障で一度失われた視野は元に戻すことができず、治療の目的は眼圧を下げて進行を抑えることになります。だからこそ緑内障は早く見つけることに意味があります。 - 3
緑内障は初期には自覚しにくい
視野の欠けは中心から離れた場所から始まることが多く、しかも左右の目が互いに補い合うため、本人は長く気づかないことがあります。日本緑内障学会が岐阜県多治見市で行った疫学調査(多治見スタディ)では、40歳以上の緑内障有病率は5.0%、疑い例を含めると7.5%と報告されました。この調査では、緑内障と診断された人の多くがそれまで診断を受けていなかったことも示されています。 - 4
両方を併せ持つことは珍しくない
どちらも加齢に関わる病気であるため、同じ方が両方を持つことがあります。この場合、白内障手術と緑内障の手術を同時に行う方法が検討されることもあります。また、隅角が狭いタイプの緑内障では、白内障手術によって目の中の水の流れる隙間が広がり、眼圧の下降につながる場合があります。
背景・コンテキスト
目のはたらきをカメラにたとえると、水晶体はレンズ、視神経は撮影した情報を送り出すケーブルに近い役割を担っています。 レンズが曇ったのであれば、新しいレンズに交換すれば写りは戻ります。 これが白内障手術に相当します。
ところがケーブルが傷んでしまった場合、 レンズをいくら新しくしても失われた情報は届きません。 緑内障で視野が欠けた部分が戻らないのは、これに近い状況です。 緑内障の治療で眼圧を下げるのは、 まだ傷んでいない部分をこれ以上失わないようにするためです。
なお、白内障が進行して水晶体が厚くなることで、 目の中の水の出口が狭くなり眼圧が上がる形の緑内障もあります。 2つの病気は無関係に並んでいるわけではなく、 互いに影響し合う場合があるという点も知っておくとよいでしょう。
患者にとっての意味
白内障と診断されたからといって、緑内障がないことにはなりません。 逆に、緑内障の治療を続けている方に白内障が起きることもあります。視野の異常は自分では気づきにくいため、検査を受けなければ分かりません。40歳を過ぎたら、目の自覚症状がなくても眼科で定期的に検査を受けることが、 早く見つけるための現実的な方法になります。 健康診断や人間ドックの眼底検査で指摘を受けた場合は、 自覚症状がなくても眼科を受診してください。
出典
- 日本眼科学会「白内障」(病気の解説)(2026-08-12 取得)
- 日本眼科学会「緑内障」(病気の解説)(2026-08-12 取得)
- 日本緑内障学会多治見疫学調査(多治見スタディ)の結果について(日本眼科学会雑誌 112巻1039頁)(2026-08-12 取得)
- 日本眼科医会「よくわかる緑内障――診断と治療――」(2026-08-12 取得)