新眼内レンズ公開: 2026-08-12
三焦点眼内レンズ「PanOptix Pro」が国内発売——光の利用率を高めた新しい光学設計
日本アルコン株式会社が、白内障手術で使う三焦点眼内レンズ(IOL) 「Clareon PanOptix Pro」を2026年3月より国内の医療機関に向けて全国発売したと発表しました。 同社独自の「ENLIGHTEN NXT 光学テクノロジー」を採用し、 レンズを通った光のうち実際に見ることへ使われる割合(光利用率)を高めた設計とされています。 以下はメーカー発表にもとづく内容で、数値はベンチ試験やシミュレーションによる評価が含まれます。
発表の要点
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光の「ロス」を減らす設計
三焦点IOLは、レンズの表面に細かい同心円状の溝を刻み、光を遠方・中間・近方の3か所へ振り分ける「回折光学系」という仕組みを使います。この過程でどうしても一部の光が散乱して視覚に使われずに失われます。メーカー発表では、従来品の Clareon PanOptix は光利用率88%(残りの12%が散乱光)であるのに対し、PanOptix Pro は94%(散乱光6%)で、失われる光を半減させたとしています。 - 2
回折光学系の理論的な上限に近づいた水準
回折光学系で達成できる光利用率には理論上の上限があり、メーカーは先行研究にもとづく上限を約96%としています。94%という値はこの上限に近い水準にあたるという位置づけです。あわせて、従来の PanOptix と比べて遠方から中間距離にかけての光のコントラストがシミュレーション上16%向上したとしています。 - 3
従来品で報告されていた特性を引き継ぐ想定
メーカーは、従来の PanOptix について多施設共同前向き無作為化試験(6か月時点)で報告されていた、スターバーストやグレアといった不快な光視現象の少なさ、眼鏡を使わずに過ごせる割合の高さ、患者満足度といった特性が引き継がれることを期待するとしています。これらは従来品での試験結果であり、新製品での長期成績は今後の報告を待つ段階です。 - 4
国内では選定療養の枠組みで選べる
日本では2020年から、多焦点眼内レンズを使う白内障手術が選定療養の対象となっています。手術そのものは保険診療で受けつつ、多焦点レンズにかかる差額分を自己負担する形です。三焦点IOLもこの枠組みの中で選択肢に入りますが、対象や費用は医療機関ごとに異なります。
背景・コンテキスト
白内障手術では、濁った水晶体を取り除いた後に人工の眼内レンズを入れます。 レンズには焦点が1か所の「単焦点」と、複数の距離にピントが合う「多焦点」があり、 三焦点IOLは多焦点のうち遠方・中間・近方の3か所に光を振り分けるタイプです。 眼鏡に頼る場面を減らしやすい一方、光を分ける仕組み上、 夜間の光のにじみやコントラストの低下が起こりうるという特性があります。
今回の製品が狙っているのは、まさにこの「光を分けることで生じる損失」を小さくする点です。 同じ量の光がレンズに入ったとき、視覚に使われる割合が高まれば、 コントラストの改善につながると考えられています。 ただし実際の見え方は、眼の状態・角膜の形状・併存する眼疾患などによって変わります。
患者にとっての意味
多焦点IOLは「眼鏡が不要になるレンズ」ではなく、見え方の傾向が単焦点とは異なる選択肢です。夜間の運転が多い方、細かい手元作業が多い方、乱視の程度などによって向き不向きが変わります。 新しい製品が使えるかどうか、費用がどうなるかは医療機関ごとに異なるため、 検討する際は担当医に「どのレンズを扱っているか」「自分の眼の状態に合うか」を確認してください。
出典
- 日本アルコン株式会社 プレスリリース「日本アルコン、三焦点眼内レンズとしてより高い光利用率を実現する白内障患者様向け三焦点眼内レンズ(IOL)「Clareon PanOptix Pro」を全国発売開始」2026年3月24日(2026-08-12 取得)
- Kohnen T, Lapid-Gortzak R, Ramamurthy D, et al. Clinical outcomes after bilateral implantation of a diffractive trifocal intraocular lens: A worldwide pooled analysis of prospective clinical investigations. Clin Ophthalmol. 2023;17:155-163.(2026-08-12 取得)